長い夢のその先に… ~追分ファームでの一幕から~





こんばんは。日本大学の松野です。
寒くなってきました。秋のG1シーズンも早半ば。欧州では平地シーズンが終わりジャンプレースの季節となります。今年もチェルトナム、グランドナショナルに向けて、白熱した戦いが始まります!






さて…






「むかし むかし 浦島は~」
…の歌い出しでもお馴染みの昔ばなしといえば、言うまでもなく 『浦島太郎』
先日とある会社が行ったアンケート調査で、日本人の多くが「浦島太郎の結末に納得していないという結果が出たそうです。









『浦島太郎』は時代に合わせて文体だけでなく、内容も改訂が繰り返されています。「時間旅行」を扱った古い物語の一つだと言えますが、こうした作品は昔から世界中に幾つも存在します。








その一つが、アメリカの作家 W・アーウィングが書いたお話 『Rip Van Winkle』
恐妻家の樵であるリップ・ヴァン・ウィンクルはある日、深い森の奥で迷い込んでしまいます。早く家に帰らないと妻に怒られてしまうと焦るリップは、とある小屋に住む見知らぬ老人たちと出会います。リップはついつい時間を忘れて、彼らとお酒を呑んで遊んでいると…気がついて家に帰ったら月日が20年近く経過しており、村に妻の姿は無く、アメリカも独立戦争を経てイギリスから独立していた…というお話です。







故・松田優作さんが役作りのために奥歯を4本抜いたことでも知られる映画『野獣死すべし』では、この『リップヴァンウィンクル』について言及する場面があります。電車の中で優作さん演じる凶暴なカメラマンの伊達が、捕まえに来た刑事の柏木(演じるのは昭和の名優・室田日出男!)と対峙するシーン…この時の優作さんの表情は、まさに「狂気」の一言







ところで、私たち競馬ファンが『Rip Van Winkle』と聞けば…
やはりアイルランドの競走馬・リップヴァンウィンクルを思い浮かべます。









今年の夏、うまカレが北海道の追分ファームに御邪魔した際のこと。
ただいま配布中のフリーペーパー『U』最新号の取材の一貫として、追分ファーム場長の吉田正志さんと追分ファーム・リリーバレーの調教主任である柘植要さんに、うまカレメンバーが質問出来る機会がありました。






そこで、メンバーの一人からこんな質問が…。







「バリードイル(柘植さんがアイルランド時代に所属していたA・オブライエン厩舎もある、世界有数の競走馬調教施設)にいた頃、凄いと思った馬は…?」







恐らくうまカレメンバーの多くはガリレオハイシャパラルといった競走馬の名前が出ることを想定していたはずです。







迷いながらも、柘植さんの答えはリップヴァンウィンクルでした。







「おー」っと唸る声が挙がれば、「意外!」という驚きの声もあり、「知らない馬名だ…」という反応も。






そのリップヴァンウィンクルは、先ほど馬名を挙げた2冠馬ガリレオの産駒で、母父は同じくアイルランドの名スプリンターであるストラヴィンスキー。イタリアの1歳セールでクールモアの代理人に安値で落札された同馬は、父親の現役時代と同じA・オブライエン厩舎に入ります。主戦は今年ジョッキーを引退し、以前から兼業していた調教師一本でのキャリアを決めたJ・ムルタ調教の段階から日ごとに評価が上昇し、デビューから連勝を飾ると、09年のクラシック有力候補として一気に注目されます。







…結果的に、シーザスターズという化け物が彼の同期にいたことは、言うまでもありません。






陣営は夏の英G1エクリプスSにてそのシーザスターズに3度目の敗戦を喫した後、マイル路線への転向を決定。挑んだのが、イギリス最高峰のマイルG1・サセックスS。1番人気に支持されたリップヴァンウィンクルは2馬身半差の快勝でこれに応えます。次いで、秋のマイルG1・クイーンエリザベス2世Sに出走。日本のG1ではあり得ない「4頭立て」ながら、これも危なげなく完勝します。





勢いに乗ってきたリップヴァンウィンクルはBCクラシックへの挑戦を決定。ジャパンカップもローテーションの選択肢となり、日本でも名前が一気に知られることとなりました。
しかし初ダートということもあってか、BCクラシック本番では良いところはなく、2番人気に推されながらも女傑ゼニヤッタに大きく離された10着惨敗。






実はリップヴァンウィンクル、2000ギニーに向けての調整の中間辺りから重度の脚部不安に悩まされていました。順調にレースを使うことが出来ず、ブリーダーズC敗戦後は長い休養に入ってしまいます。
復帰戦は翌年6月のロイヤルアスコット開催。そのクイーンアンSでは3番人気に支持されるも、ゼロ年代最強マイル女王の呼び声高いフランスの名牝ゴルディコヴァ相手に3着と敗れてしまいます





それでも復帰3戦目、真夏の中距離G1英インターナショナルSを1番人気に応えて3つ目のG1タイトルを奪取します。その後は愛チャンピオンSと連覇を賭けたクイーンエリザベス2世Sで2着と敗れ、脚部不安もあって2度目のブリーダーズカップ挑戦を回避した段階で現役を引退通算成績は14戦5勝。うちG1は3勝で、2着は4回







リップヴァンウィンクルはファンも多く、一度として3番人気以下がない競走馬でもありました。
そして、管理するA・オブライエン師や、主戦のJ・ムルタ騎手(現調教師)の評価も非常に高かったと言われています。柘植さんも「もっと勝てると思っていた。」と話して下さいました






追分ファームでのインタビューの際、柘植さんも、追分ファーム場長の吉田正志さんも、日々「勝つためにはどうすればいいか」を考えながら、競走馬の生産・育成取り組んでいると仰っていました。1勝が難しい競走馬の世界ですから、当然「2勝、3勝とする」ことはもっと難しいことです。ましてはG1となれば…。





とはいえ、リップヴァンウィンクルはそれ以上に大きな期待が寄せられていただけで、日本人に馴染みのある大レースこそ制してはいませんが、欧州競馬界での評価は非常に高いものです。
今夏に産駒がデビューを果たしていますが、早くも初年度産駒のディックウィッティントンが2歳G1のフェニックスSを優勝。リップと同じA・オブライエン厩舎の所属で、来年は父親の現役時代に立ちはだかったシーザスターズの産駒にリベンジを果たしての悲願・クラシック制覇が期待されます







フランケルを始め、テオフィロ、ニューアプローチ、ケープブランコと後継種牡馬争いが徐々に激化しつつあるガリレオ産駒。既にケープブランコ日本での種牡馬導入が決定しており、リップヴァンウィンクルの産駒も1歳馬が日本へ輸入されています。このまま順調に行けば、来年デビューになるでしょう。
現役を引退するということは、決して残念なニュースではなく、新たな戦いの始まりなのです。







ここ数ヶ月、競馬界では様々な動きがありました。良いニュースもあれば、残念なニュースもあって、出来事や取り組みの多くが賛否両論…批判の方が多かったかもしれません。また、私たち競馬ファンの在り方も問われていますが、その一方で、競馬に直接携わる人たちの在り方も問われています。
1つのレース、1つの予想、1つの出来事で、競馬を捉えてはいけないということ
様々な角度から競馬を見ることによって、新しい発見が生まれるはずです。






今回のフリーペーパー『U』Vol.11の取材では、本当に様々な事を考えさせられました。競馬に直接的に携わる人間接的に携わる人の第3者。一度に交流する機会というのはなかなかありません。だからこそ、互いにコンテクストの擦り合わせが可能なこうした機会を、今後設けていけたら…と強く感じます。
そして、今回の『U』は追分ファームの取材だけでなく、競走馬の余生に関する特別コラム(前後編)も掲載されております。

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是非、お手にとって読んでいただけたらな、と思います。設置場所は大井競馬場・船橋競馬場・川崎競馬場、また関東圏ではうまカレメンバーのいる大学や学生の使えるフリースペースに設置させていただきます。詳しくはこちら↓
http://umacollege.blog.fc2.com/blog-entry-377.html







競馬をもっと知るには、競馬を楽しむには、やはり「競馬をする」しか方法はありません。
自分の中の問いに対する答えは、自分の行動次第で「納得できるもの」にも「納得できない」ものにも変わり得るはず…。
競馬と自分…その答えを求めて、「リップ・ヴァン・ウィンクル」のように、今日も彷徨います。




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うまカレ


全国の大学に在る競馬サークルのメンバーを中心とした競馬を愛する学生たちが既存の競馬ファンだけでなく、競馬をやったことのない人たちにも『競馬の楽しさや素晴らしさを伝えよう!』と立ち上げた学生団体です。

学生競馬ファンのリーディングとして、主に学生を中心とした同年代へ向けて、競馬の素晴らしさ、面白さを様々な視点やコンテンツを通じて紹介し、競馬文化の普及、競馬事業への文化的支援を行うことを目的としています。

オグリの時代に生まれた僕らで
オグリの時代の熱狂を、もう一度。

※2005年より20歳以上であれば学生でも勝馬投票券を購入できるようになりました※

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