ウオッカ後編・ドラマのルーツ~フロリースカップ系~

みなさんこんにちは。うまカレ初代代表の早大お馬の会佐藤です。



冬も本番を迎えたということもあり、寒いですね…毎日鍋が恋しくなります。。


せめて懐まで寒くならないよう、予想の検討はしっかり行っていきたいものですね(笑)



さて、月イチの恒例、血統昔話も毎月書くようになってからちょうど一年が経とうとしています。




過去の名馬から現在の活躍馬まで、さまざまな馬を取り上げてきたこのコーナー。


どうしても難しいという印象のある血統を、より血のロマン、血のドラマという部分を強調しながら紹介してきました。



このコーナーを見て、血統が好きになった、血統に興味を持った、そして競馬の新しい楽しみ方を知った、という方がいれば、私も書いた甲斐があるというものです。





予定では、月イチの連載は今年度中、あと4回ほどで一旦終了を予定しています。持ちネタが少なくなってきたこともありますが(笑)、元々不定期で始めた連載ですからね。何か
面白い血統の馬がいたら、また書くことがあるかもしれません。






ひとまず、残り4回、この連載をよろしくお願いいたします。



今回は11月に引き続きウオッカですが、残り3か月、何かリクエストがあればその馬について書くことも可能かもしれませんので、お気軽にコメントしていただければと思います。






ということで、今月はウオッカの後編ですね。





先月の前編(受け継がれる『王家の血』http://umacollege.blog.fc2.com/blog-entry-212.htmlは、思ったより反響があり、改めてこの馬の持つスター性を感じたりもしました。



前編では90年ほど前の快速馬ムムタズマハルの血を受け継いでいるというお話をしましたね



書き忘れてしまったのですが、ムムタズマハルはウオッカと同じく8代後の子孫にダート女王ホクトベガを輩出したりもしています。この血は不思議な底力がありますね。いずれまた大物が出るかもしれません。





さて、今回は後編。前編は父タニノギムレットの牝系について書いていきましたが、今回はウオッカ自身の牝系について書いていきましょう。

みなさん、手元におつまみ用のお菓子の用意はいいですか…?今日も長くなりますよ…?





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以前、この連載でオルフェーヴルを取り上げたことがあります。
(日本競馬、100年の歴史の結晶http://umacollege.blog.fc2.com/blog-entry-77.html



ここで、小岩井農場のお話をしましたね。




東北・岩手県の県庁所在地である盛岡市から車で30分ほど。名峰岩手山を望むところに、小岩井農場はあります。




今日はこの小岩井農場から話を進めていきましょう。




割と有名な観光スポットでもある小岩井農場。



私は実家が山形ということもあり、幼い頃から数回、この場所を訪れたことがあります。


10年以上前にはSL機関車と客車を利用した『SLホテル』というものがあり、数年に一度
ここに宿泊するのは、幼い頃の楽しみでもありました。
残念ながら5年ほど前に営業を終了したようですが、、、



ちなみに、この小岩井農場のレストランのチーズケーキがとても美味で。甘いもの好きで四六時中スイーツを食べている私が、これまでの人生で食べたチーズケーキの中でもベスト3に入るほどのおいしさだったと思います。




またしても先月同様るるぶのような文章になってきましたね…(笑)




話を戻して。




岩手山が火山ということもあり、この小岩井一帯は火山灰が降り積もった土壌。この手の土壌は強い酸性であることが多く、通常は農場にすることが難しいと考えられています。現在の技術ならまだしも、小岩井農場が開場されたのは今から120年以上も前。開場には相当な苦労があったと推測できます。



地道な努力により豊かな農場となっていった小岩井農場は、1907年、イギリスから20頭の繁殖牝馬を輸入します。当時は輸入するだけでも相当な費用が掛かったのですが、購買金額も現在の単位で数十億単位という相当な金額が使われました。
ちょうど日露戦争で日本が勝ったことにより、母体の三菱財閥にも相当なお金があったのでしょうね。それにしても凄い金額です。



この20頭のうち、10頭ほどの繁殖牝馬の子孫は100年以上経過した今でも、日本で活躍馬を輩出しています。
アイネスフウジン、レガシーワールド、グランドマーチス、ホウヨウボーイ、トロットサンダー、ヒシミラクル、カルストンライトオ…ここらへんのG1馬の祖先は皆ここで輸入されています




これを読んでいる皆さんの応援している馬、好きな馬も、祖先を辿るとこの20頭の牝馬のうちのどれかにたどり着くかもしれませんよ…



それくらい、この20頭の繁殖牝馬が日本競馬に与えた影響は大きいのです。





その20頭のうちの1頭が、以前オルフェーヴルを取り上げた時にご紹介したのが、アストニシメント




そしてホエールキャプチャを取り上げた時にご紹介したのが、ビューチフルドリーマー。(ビューチフルドリーマー・千代田牧場が紡いだ美しき夢をご参照ください!http://umacollege.blog.fc2.com/blog-entry-123.html



このアストニシメント、ビューチフルドリーマーと共に『小岩井御三家』と称されるのが、今日のお話の主役であるフロリースカップ上記2頭を超える繁殖実績を残し、今の日本競馬はこの馬をなくして語れないと言えるくらい大きな功績を残した繁殖牝馬です。





では、どのくらいこのフロリースカップが凄いのか。




現在まで100年以上フロリースカップの子孫は生き残り続けていますが、子孫はなんと天皇賞春、秋合わせて10勝。


クラシックは計18勝皐月賞5勝に加え、競馬の最高峰であるダービーを7勝もしています。


『最も運のいい馬が勝つ』と言われているダービーを7勝ともなると、もはや強運という言葉では片付けられませんね(笑)




一頭ずつ挙げていくといつ書き終わるのか分かりませんので、代表的な馬を紹介すると、



まずは名ホースマンとして知られる畑江五郎氏が生んだ最高傑作ガーネット有馬記念を勝った名牝ですね。6代母がフロリースカップ。


G1を5勝した名馬で、『カミソリの切れ味』と称えられた末脚を持ったダービー馬コダマコダマも6代母がフロリースカップ。


G1を2勝し、今は無き単枠指定制度が初めて適用されたキタノカチドキも、6代母がフロリースカップ。


アイドルホース・ハイセイコーの代表産駒でダービー馬のカツラノハイセイコは7代母がフロリースカップ。


G1を3勝し、日本競馬史上最速とも言われる最強スプリンター・ニホンピロウイナーも7代母がフロリースカップ。


他にも、大波乱のエリザベス女王杯を制したサンドピアリス、裸足のシンデレラ・イソノルーブル(冥福を祈ります…)を倒した桜花賞馬シスタートウショウ、菊花賞馬マチカネフクキタルもフロリースカップの子孫にあたります。あ、障害王ポレール9代母がフロリースカップですね。




これだけでもフロリースカップが日本競馬を支えてきたことが分かりますが、近年、フロリースカップは更に勢力を伸ばします。


1995年、日高大洋牧場に繋養されていた一頭の繁殖牝馬が、父サンデーサイレンスの黒鹿毛の牡馬を出産し、数日後に亡くなります。この繁殖牝馬は祖母の兄がコダマ。

この黒鹿毛の牡馬は大事に育てられ、栗東の名伯楽白井寿昭調教師に鍛えられ、武豊騎手に初めてのダービータイトルをプレゼントすることとなります。そうですね、G1を4勝したスペシャルウィークです。


スペシャルウィークは父として日米オークス馬シーザリオを輩出。そのシーザリオが今年の菊花賞馬エピファネイアを輩出しましたが、エピファネイアは11代前にフロリースカップの血を持っていることになります。エピファネイアにはコダマなど数々の名馬と同じ血が流れているのです




2003年、日高の小さな牧場で生まれた鹿毛の牡馬は、父オペラハウス、母父ダンシングブレーヴと重厚で、決して目立つとは言えない血統構成を持っていました


4代母に先ほど紹介した名牝ガーネット、10代母にフロリースカップを持つこの牡馬を、ネオユニヴァースなどを育てた栗東の名伯楽瀬戸口勉元調教師が見出し、『メイショウ』の冠名で知られる松本好雄オーナーが700万円のお手頃価格で購入。

この鹿毛の牡馬が後にメイショウサムソンと名付けられ、ダービーなどG1を4勝
日高の中小牧場が生んだ奇跡のスーパーホースにも、フロリースカップの血が流れています



他にもアイドル的人気があったオースミハルカ、新潟外回りで驚異的な末脚を駆使したオースミグラスワン兄弟も7代母がフロリースカップ。もちろんハルカの息子オースミイチバンもフロリースカップの血を受け継いでいます。


ジャパンダートダービーを勝ったビッグウルフや、2歳王者セイウンワンダー、名スプリンターだったシーイズトウショウ、そうそう、シェルズレイブラックシェル姉弟を輩出したオイスターチケットも、母系を辿るとフロリースカップにたどりつきますね。


こうしてみると、かなりの活躍馬がフロリースカップの子孫ですね。どうです、ここまで皆さんの好きな馬は出ましたか…?
スペシャルウィークやメイショウサムソンとシーイズトウショウやポレールなどが遠い親戚というのが血統の面白いところ




話はだいぶ逸れました…ちょっと時間を巻き戻して。




フロリースカップの子孫の中でも、コダマを輩出したシラオキの系統はスペシャルウィークやシスタートウショウ、近年ではシーイズトウショウなどを輩出しているように活力がありますが、この牝系に目を付けたのが、名門カントリー牧場のオーナー谷水雄三
谷水氏はタニノシーバードの輸入などでウオッカ血統話前編に登場しています。



この谷水氏が、フロリースカップ系で桜花賞馬シスタートウショウの全姉にあたるエナジートウショウにフランスの名マイラー・ルションを配合して生まれた牝馬を購入します。

この牝馬が、後に桜花賞などにも出走し、5勝を挙げたタニノシスターです。


ちなみにタニノシスターと同じ、1993年生まれの牝馬に、ビワハイジ、そしてエアグルーヴがいたりします。後に繁殖牝馬としても偉大な成績を残す馬が集まっていますね。




繁殖入りしたタニノシスターにはラムタラブライアンズタイムが付けられてきましたが、繁殖入りして4年目の種付け相手に選ばれたのが、この年の新種牡馬で、カントリー牧場が生んだダービー馬タニノギムレット


翌年の2004年春に生まれた鹿毛の牝馬は、調教をやるごとに動きが良化。その動きが評判になり、お父さんのタニノ『ギムレット』より強くなるようにとの願いを込め、ギムレットよりアルコール度数が強い酒である『ウォッカ』から名前が取られます




ようやく今日もお話の主役にたどり着きました…この鹿毛の牝馬が、後にG1を7勝する名牝ウオッカです。



フロリースカップから数えて11代目、フロリースカップなどが小岩井農場に輸入されたのが1907年なので、そのちょうど100年後の2007年のダービーで、ついにこの牝系から牝馬のダービー馬が誕生したことになりますね。


100年間、日高の生産者たちが当時の一流種牡馬を掛け合わせて繋いできた血が爆発した瞬間でもあったと思います。



フロリースカップ自体は現在の価格で表すと5億円ほどだったとされていますが、100年間にこの何十倍もの額を稼ぐことになるとは、さすがに輸入した人物も想像できなかったのではないでしょうか(笑)




オルフェーヴルらに流れるアストニシメントの血も、ホエールキャプチャに流れるビューチフルドリーマーの血も、そしてこのフロリースカップの血も、一時は『種牡馬の墓場』とも言われた日本が大事に育ててきたことで、現在、多数の活躍馬を輩出しています。これまでの生産者に敬意を表すると同時に、スペシャルウィーク、メイショウサムソン、ウオッカらの祖先を辿ると一頭の牝馬に行き着くという、血の不思議な魅力を改めて感じる次第です。



フロリースカップの子孫で現役の活躍馬を挙げると、白山大賞典勝ち馬で大井に転入したパワーストラグル、そしてメイショウウズシオ、サトノシュレン、ミトラ、エーシンヒットマン、ホクセツダンス、スーサングレート、このあたりが挙げられますね。

今年北海道の芝2600を盛り上げて菊花賞に出走したヤマイチパートナー、極悪馬場の札幌2歳ステークスで2着に踏ん張ったマイネグレヴィル、ここらへんもフロリースカップの子孫です。挙げた馬がみんな遠い親戚と考えるとなんとも不思議ですね。



そうそう、昨年の京成杯オータムハンデを1分30秒7という信じがたい時計で勝ったレオアクティブも、12代母がフロリースカップです。

ちなみにその京成杯オータムハンデを連覇したブレイクタイムはレオアクティブの伯父にあたります。ブレイクタイムは11代母がフロリースカップですね。



フロリースカップの系統は、ウオッカやレオアクティブのように高速決着を苦にしません。そしてマイネグレヴィルらのように道悪の芝もこなしますニホンピロウイナーのような快速馬だけではなく、スペシャルウィークなどのステイヤーも輩出する…本当にバリエーション豊富な血ですね。


この血はまだまだ活躍馬を輩出するでしょうし、日本競馬を支え続けていくでしょう。100年後だろうが一流馬を輩出する下地があります。



後世、この系統から輩出された一流馬の祖先がウオッカ…ということがあるかもしれません。それもまた競馬のロマンであり、血のドラマであり、魅力でもあると思います。


こうして長年にわたって名馬を輩出し続ける小岩井牝系を輸入した人々、そして不毛な土地を豊かな農地に変えた人々は、今天国でどう思っているのでしょうか。気になるところです。
この先人たちがいて、私たちが競馬を楽しめることを、私たちは忘れてはいけないと思います。





さて、長々と話を続けてきましたね。今回は本当に長かった(笑)


2部に分けて書いてきたウオッカ血統昔話、いかがでしたでしょう。これを1つにまとめて書いていたらと思うと…たぶん書くのに半日以上の時間が必要だったと思います。
ネットカフェの6時間パックでも追いつかなかった気が(笑)


このコーナーも、残り3回。そのうち2回は何を書くか決めていますが、1回はまだ流動的です。何か取り上げてほしい馬がいたら、ぜひ言っていただければと。もちろん書ける馬と書けない馬がいるので確実に取り上げられるかは分かりませんが…



今回も通勤通学や昼休みの時間潰しになったなら幸いです。そして競馬の新しい魅力を知っていただけたなら、もっと幸いです。


以上、早大お馬の会前会長、うまカレ初代代表佐藤ワタルでした!


アディオス!
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全国の大学に在る競馬サークルのメンバーを中心とした競馬を愛する学生たちが既存の競馬ファンだけでなく、競馬をやったことのない人たちにも『競馬の楽しさや素晴らしさを伝えよう!』と立ち上げた学生団体です。

学生競馬ファンのリーディングとして、主に学生を中心とした同年代へ向けて、競馬の素晴らしさ、面白さを様々な視点やコンテンツを通じて紹介し、競馬文化の普及、競馬事業への文化的支援を行うことを目的としています。

オグリの時代に生まれた僕らで
オグリの時代の熱狂を、もう一度。

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